2009年03月28日
Yの悲劇
Yの悲劇
以前、『思ひ出』というタイトルで青春の美しくも(ない)悲しい出来事を書いたら、各方面から大変な反響があり続編を望む声が多かった。この駄文を読む前に是非ご一読いただきたい。
自虐ネタなので発表の後、皆に嘲笑とあざけりの白い目・含み笑い目線で見られているような気がして、僕も心穏やかではなかった。
よって本日は他人ネタで行くことにする。
『思ひ出』に登場のY元(以下Y)は、眠りにつく僕の美しい顔に下品な落書きをした下手人の一味として天の裁きを受け、その罰として大学を留年する羽目になる。そのいきさつたるやドラマチックで劇的だ。
Yは高校時代ラグビー部の副主将でいわゆる典型的な体育会系。猪突猛進型で単純、熱しやすく冷め易い分かり易いタイプの性格である。毎晩ビールを鯨のごとく胃袋に流し込み、酔うと奇声を上げながら騒ぎ突然泣き出したりする誠に忙しいヒトなのだ。酒席で相手に議論を吹っかけるのが好きであるが、常にその非論理性を突かれ相手の返り討ちにあい、挙句、論破され凶暴なマナコで相手をにらみ返すも反論できずに部屋の壁に八つ当たりして額から血を流す。
そんなニクメないカワイイ奴なのであった。
Yはバイトに明け暮れていて授業終了後はほとんど毎日のようにバイト先に出勤し、かなりの高額を稼いでいた。その大半をマージャンで我々に貢ぎ、酒を喰らい毎晩のように怪気炎を上げるという荒れた連続性の規律を守り、青春を謳歌していた。
当然ながら学業はおろそかになる。
定期的にやって来る期末(後期)試験。
この日のこの科目は絶対にYにとって落とせない大事な必須科目である。落とすと進級できない。
一夜漬けで何とかなる代物ではない。かなりの難易度。
試験勉強やるにはやったが日ごろの怠慢がたたりまったく自信がない。《落第》の二文字がYの頭のなかを駆け巡る。
両親の顔が浮かんだ。浜比嘉島のオバァの顔も浮かんだ。天国のひいオジィも出てきた。
焦るY。しかし時間だけが無常にも刻一刻と過ぎてゆく。
すると、つけっぱなしのテレビから突然、松村和子の歌う当時流行った(かな?)
♪帰って来いよ~ 帰って来いよ~♪(この歌知ってますか?)
のフレーズが流れてきてYの鼓膜を振るわす。Yの心の琴線は刺激され、やがてYはトランス状態に陥った。
「そうだ!オレは4年で卒業してクニに帰るんだ!ここで落第なんか出来ない」
彫刻のように言葉が刻まれてゆく。
そして悪魔がささやく…
『ホントは実力で解けるんだけど、すこ~しだけ、ほんのすこ~しだけ便利な事しようね』
当日Yは一時間も早く登校し試験会場の教室のすみで自習を始める。
自習と言っても試験に出そうな問題を机にひたすら書き写すのみ。
その日の試験官は悪名高きカンニングハンターT事務官。
そこは計算済みのY。Tの死角になりそうな場所の机に陣取っていた。
試験が始まった。ヤマが当たった! 大ヤマだ!
これで難関突破!進級間違いなし!
Tの動きを観察しつつ必死で書き写す。バラ色の卒業後の人生を夢見ながら…。
『これは、なんだね。』
突然、地の底から湧き出るような不気味なささやき。夢から覚める。
背後にはK試験管がキツネ眼をさらに細めてほほに薄ら笑いさえ浮かべて、文字の書かれた机の上をコツコツ叩きながら立っている。
しまった!Kがいた。
大教室なので試験管は二人いる。ハンターTに気を取られKの存在を甘く見ていた。
奈落の底に突き落とされるとはこの事。
カンニングは重罪。これでバラ色の人生も進級も全てパー。
頭に浮かんだやさしく微笑む両親の顔もふるさとの風景も、台風時の衛星放送のように奇妙なモザイクがかかり、そして消えた。
頭が真っ白になりパニックに陥ったラガーマンYはとっさに思いついた!
学生は数千人もいる。オレの顔なぞ覚えているわけがない。
《証拠を消せ!》
名前の書かれた答案用紙をムンズとわしづかみにし、教室から飛び出した。自分のカバンを小脇に抱え全力で走った。脱兎のごとく走った。
それはまるでタッチダウンを狙いゴールへ向かうラガーマンの姿そのものであった。
100ヤード独走の後一息ついた。これで俺が会場に居たと言う物的証拠はなにもないはずだ。Yの試みは成功した。かに見えた。
その頃、Yの担当教授であるC教授の下に一枚の学生証が届いた。
C教授はまるでナチの高官も顔負けの不気味でネグラな表情を浮かべて言った。
『答案用紙をもって逃げ出したまでは良いが、学生証を置きっぱなしにするとはのう~。アホな奴よ。さて、どうしてくれようか…。』
帰宅後その事に気づいたYは、もはや為す術もなく、自室で時折雄叫びを上げながら男泣きに泣いた。
その後の結果は先に書いたとおりである。
先に卒業する僕たちの送別会の席で、荒れに荒れたYの目に惜別のそれではなく悔し涙が滲んでいたのを僕は見逃さなかった。
ちなみにその後の彼の口癖は
『悪いことはできない! 必ずバチが当たる!』であった。
エピローグ
もちろんこの物語は事実でありYも実在の人物である。Yは一年遅れでメデタク大学を卒業しコザに帰ってきて住んでいる。
思い当たる人物を見つけても決して他言せず、このブログを思い出しホクソ笑むだけにして頂きたい。
実直でまっすぐな性格の彼は現在、ある大手企業のサラリーマンとして肩書きも付、上司からは頼られ部下からは慕われる存在である。
そして酒を飲むと同僚や後輩にこう言っているそうだ。
『オレは勉強と学校が大好きで、5年間大学に通った!』
彼は今でも僕の親友である。
この事実をいつか白日の下に晒す事こそ親の友人の勤めだと信じている。そして生きがいでもある。
おわり
以前、『思ひ出』というタイトルで青春の美しくも(ない)悲しい出来事を書いたら、各方面から大変な反響があり続編を望む声が多かった。この駄文を読む前に是非ご一読いただきたい。
自虐ネタなので発表の後、皆に嘲笑とあざけりの白い目・含み笑い目線で見られているような気がして、僕も心穏やかではなかった。
よって本日は他人ネタで行くことにする。
『思ひ出』に登場のY元(以下Y)は、眠りにつく僕の美しい顔に下品な落書きをした下手人の一味として天の裁きを受け、その罰として大学を留年する羽目になる。そのいきさつたるやドラマチックで劇的だ。
Yは高校時代ラグビー部の副主将でいわゆる典型的な体育会系。猪突猛進型で単純、熱しやすく冷め易い分かり易いタイプの性格である。毎晩ビールを鯨のごとく胃袋に流し込み、酔うと奇声を上げながら騒ぎ突然泣き出したりする誠に忙しいヒトなのだ。酒席で相手に議論を吹っかけるのが好きであるが、常にその非論理性を突かれ相手の返り討ちにあい、挙句、論破され凶暴なマナコで相手をにらみ返すも反論できずに部屋の壁に八つ当たりして額から血を流す。
そんなニクメないカワイイ奴なのであった。
Yはバイトに明け暮れていて授業終了後はほとんど毎日のようにバイト先に出勤し、かなりの高額を稼いでいた。その大半をマージャンで我々に貢ぎ、酒を喰らい毎晩のように怪気炎を上げるという荒れた連続性の規律を守り、青春を謳歌していた。
当然ながら学業はおろそかになる。
定期的にやって来る期末(後期)試験。
この日のこの科目は絶対にYにとって落とせない大事な必須科目である。落とすと進級できない。
一夜漬けで何とかなる代物ではない。かなりの難易度。
試験勉強やるにはやったが日ごろの怠慢がたたりまったく自信がない。《落第》の二文字がYの頭のなかを駆け巡る。
両親の顔が浮かんだ。浜比嘉島のオバァの顔も浮かんだ。天国のひいオジィも出てきた。
焦るY。しかし時間だけが無常にも刻一刻と過ぎてゆく。
すると、つけっぱなしのテレビから突然、松村和子の歌う当時流行った(かな?)
♪帰って来いよ~ 帰って来いよ~♪(この歌知ってますか?)
のフレーズが流れてきてYの鼓膜を振るわす。Yの心の琴線は刺激され、やがてYはトランス状態に陥った。
「そうだ!オレは4年で卒業してクニに帰るんだ!ここで落第なんか出来ない」
彫刻のように言葉が刻まれてゆく。
そして悪魔がささやく…
『ホントは実力で解けるんだけど、すこ~しだけ、ほんのすこ~しだけ便利な事しようね』
当日Yは一時間も早く登校し試験会場の教室のすみで自習を始める。
自習と言っても試験に出そうな問題を机にひたすら書き写すのみ。
その日の試験官は悪名高きカンニングハンターT事務官。
そこは計算済みのY。Tの死角になりそうな場所の机に陣取っていた。
試験が始まった。ヤマが当たった! 大ヤマだ!
これで難関突破!進級間違いなし!
Tの動きを観察しつつ必死で書き写す。バラ色の卒業後の人生を夢見ながら…。
『これは、なんだね。』
突然、地の底から湧き出るような不気味なささやき。夢から覚める。
背後にはK試験管がキツネ眼をさらに細めてほほに薄ら笑いさえ浮かべて、文字の書かれた机の上をコツコツ叩きながら立っている。
しまった!Kがいた。
大教室なので試験管は二人いる。ハンターTに気を取られKの存在を甘く見ていた。
奈落の底に突き落とされるとはこの事。
カンニングは重罪。これでバラ色の人生も進級も全てパー。
頭に浮かんだやさしく微笑む両親の顔もふるさとの風景も、台風時の衛星放送のように奇妙なモザイクがかかり、そして消えた。
頭が真っ白になりパニックに陥ったラガーマンYはとっさに思いついた!
学生は数千人もいる。オレの顔なぞ覚えているわけがない。
《証拠を消せ!》
名前の書かれた答案用紙をムンズとわしづかみにし、教室から飛び出した。自分のカバンを小脇に抱え全力で走った。脱兎のごとく走った。
それはまるでタッチダウンを狙いゴールへ向かうラガーマンの姿そのものであった。
100ヤード独走の後一息ついた。これで俺が会場に居たと言う物的証拠はなにもないはずだ。Yの試みは成功した。かに見えた。
その頃、Yの担当教授であるC教授の下に一枚の学生証が届いた。
C教授はまるでナチの高官も顔負けの不気味でネグラな表情を浮かべて言った。
『答案用紙をもって逃げ出したまでは良いが、学生証を置きっぱなしにするとはのう~。アホな奴よ。さて、どうしてくれようか…。』
帰宅後その事に気づいたYは、もはや為す術もなく、自室で時折雄叫びを上げながら男泣きに泣いた。
その後の結果は先に書いたとおりである。
先に卒業する僕たちの送別会の席で、荒れに荒れたYの目に惜別のそれではなく悔し涙が滲んでいたのを僕は見逃さなかった。
ちなみにその後の彼の口癖は
『悪いことはできない! 必ずバチが当たる!』であった。
エピローグ
もちろんこの物語は事実でありYも実在の人物である。Yは一年遅れでメデタク大学を卒業しコザに帰ってきて住んでいる。
思い当たる人物を見つけても決して他言せず、このブログを思い出しホクソ笑むだけにして頂きたい。
実直でまっすぐな性格の彼は現在、ある大手企業のサラリーマンとして肩書きも付、上司からは頼られ部下からは慕われる存在である。
そして酒を飲むと同僚や後輩にこう言っているそうだ。
『オレは勉強と学校が大好きで、5年間大学に通った!』
彼は今でも僕の親友である。
この事実をいつか白日の下に晒す事こそ親の友人の勤めだと信じている。そして生きがいでもある。
おわり
この記事へのトラックバックURL
http://deigohotel.koza.in/t2454795
この記事へのコメント
キタキタキター!
青春記・続編、待ってました!
若い頃にはいろいろやらかすものですが、何がおかしいって絶対に宮城さんの文章力に負うところが大きいと思います!
改めてブログを読み返してみましたが、おもしろすぎる!
山あり、谷ありの人生。
宮城さんのように、自分を笑いとばせる余裕を持ってのぞみたいものだとしみじみ思います。
(もしかしたら、自分を笑っているわけではないか?)
県内なので、なかなか沖縄市のホテルには泊まりませんが、ぜひ一度泊まってみたいと思ってしまう私です。
がんばれ!デイゴホテル!!
青春記・続編、待ってました!
若い頃にはいろいろやらかすものですが、何がおかしいって絶対に宮城さんの文章力に負うところが大きいと思います!
改めてブログを読み返してみましたが、おもしろすぎる!
山あり、谷ありの人生。
宮城さんのように、自分を笑いとばせる余裕を持ってのぞみたいものだとしみじみ思います。
(もしかしたら、自分を笑っているわけではないか?)
県内なので、なかなか沖縄市のホテルには泊まりませんが、ぜひ一度泊まってみたいと思ってしまう私です。
がんばれ!デイゴホテル!!
Posted by ふみちゃん at 2009年03月29日 21:17
お久しぶりです(*^_^*)
ラガーマンYの妻です
幸か不幸か(誰が?)
あの時、彼が留年せずに沖縄に帰ってたら
私と出会うことなく、結婚もしてなかったんだろうなあ
と思います。
彼にとってよかったのか?私にとってよかったのか?
今後の結婚生活もありますので、コメントは差し控えさせて
いただきます。
人生っておもしろいね
ラガーマンYの妻です
幸か不幸か(誰が?)
あの時、彼が留年せずに沖縄に帰ってたら
私と出会うことなく、結婚もしてなかったんだろうなあ
と思います。
彼にとってよかったのか?私にとってよかったのか?
今後の結婚生活もありますので、コメントは差し控えさせて
いただきます。
人生っておもしろいね
Posted by ラガーマンYの妻 at 2009年03月29日 21:37
ふみちゃんへ
今度コザに来るときは、デイゴに泊まる。
そしてとりあえず大浴場につかり命の洗濯をする。
それから街に繰り出し、コザの仲間たちとコザのB級グルメを堪能してあーだこーだといいながら、お酒をたらふく飲む。
限りなく朝方に近い頃宿に帰り自慢の固めのベットで深い眠りにつく。
惰眠をむさぼった後、大浴場で朝風呂に入り酒気を抜き、ホテル内レストランにて和朝食を食べる。
元気になるよ。
どーですかこのプラン?
Yの妻Kさんへ
お久しぶりです。
多少の脚色はありますが、おおむねこんな感じです。
あなたとの結婚は彼にとって間違いなく良です。
はてあなたにとっては?・・・。
神のみぞ知るです。
しかし20年も一緒にいるのだから良しとしましょうよ。
時々モアイにも顔出してくださいね。
暴露バナシたくさん在庫あります。
今度コザに来るときは、デイゴに泊まる。
そしてとりあえず大浴場につかり命の洗濯をする。
それから街に繰り出し、コザの仲間たちとコザのB級グルメを堪能してあーだこーだといいながら、お酒をたらふく飲む。
限りなく朝方に近い頃宿に帰り自慢の固めのベットで深い眠りにつく。
惰眠をむさぼった後、大浴場で朝風呂に入り酒気を抜き、ホテル内レストランにて和朝食を食べる。
元気になるよ。
どーですかこのプラン?
Yの妻Kさんへ
お久しぶりです。
多少の脚色はありますが、おおむねこんな感じです。
あなたとの結婚は彼にとって間違いなく良です。
はてあなたにとっては?・・・。
神のみぞ知るです。
しかし20年も一緒にいるのだから良しとしましょうよ。
時々モアイにも顔出してくださいね。
暴露バナシたくさん在庫あります。
Posted by B級ホテル屋 at 2009年03月30日 14:22
はじめまして、先日 亡くなった 母からの 伝
言です。 『あなたが、私を轢いていないのは
分かっています。決して怨んでなどいません。
ただ、あの時、あなたが 好物のオオトロに 見
えただけなのです。じっと見て申し訳ありません
でした。
最期まで看取って頂き感謝しています。 今後
は あなたの良きシモベとなり あなたの お傍
で仕えるつもりです。』 心優しい人には 母の
姿は見えませんので ご安心ください。子猫より
言です。 『あなたが、私を轢いていないのは
分かっています。決して怨んでなどいません。
ただ、あの時、あなたが 好物のオオトロに 見
えただけなのです。じっと見て申し訳ありません
でした。
最期まで看取って頂き感謝しています。 今後
は あなたの良きシモベとなり あなたの お傍
で仕えるつもりです。』 心優しい人には 母の
姿は見えませんので ご安心ください。子猫より
Posted by 迷子の子猫 at 2009年06月13日 15:21
